✞ 雨の刺す頃10 ✞
文字数:約1204文字 【 退職 】 心は変わる。 不安定さに慣れてしまう。 これが普通だと思いたくないのに。 指導者さんからメールが来た。 『支部長を交えて話をしよう』 私の返事は苛立ちに満ちていた。 『今まで話して、何も判ってくれなかったじゃない』 ...
文字数:約1204文字 【 退職 】 心は変わる。 不安定さに慣れてしまう。 これが普通だと思いたくないのに。 指導者さんからメールが来た。 『支部長を交えて話をしよう』 私の返事は苛立ちに満ちていた。 『今まで話して、何も判ってくれなかったじゃない』 ...
文字数:約1197文字 【 孤独 】 いつだって、叫んでいた。 その声は小さくて、小さくて。 誰にも届かなかったけど。 1週間ぐらい経った日の事。 夕食の後、携帯を見ると着信があった。 所長さんからだった。 いつもなら放っておく着信を、かけ直そうか迷った。...
文字数:約1025文字 【 傷痕3 】 生きる事が見えない。 生きている感覚が見つからない。 私は、生きてるの? 店を出て、指導者さんと従姉妹ちゃんは支社の方へ行った。 私はそれに着いて行く事は出来ず、駅前を適当に見ていた。 本屋に座るスペースがあった。...
文字数:約1103文字 【 傷痕2 】 言葉が見えない。 自分が見つからない。 私はなぜ、伝えようとしたの? 気分が落ち着いたのは1時間以上経ってからだった。 足が痺れていた。 指導者さんにメールを送った。 『ごめんなさい。出来ない』 折り返し電話があっ...
文字数:約931文字 【 傷痕1 】 息が出来ない。 居場所が見つからない。 私はなぜ、ここにいるの? 頭痛が止まないまま、会社に行った。 指導者さんから従姉妹ちゃんに話した事を聞いた。 従姉妹ちゃんが話し掛けてきた。 「昨日は、よく休めた?」 「お...
文字数:約842文字 【 休日 】 傷は誰の目にも触れさせたくないの。 内緒話のようにひっそりと 秘密のままでいて欲しかったの。 次の日、父が指導者さんに連絡して私は休む事になった。 のは、私が知らない所でだった。 朝、目が覚めると食パンをいつも通り食...
文字数:約929文字 【 涙雨3 】 何もしなかった。 何も出来なかった。 どうして、責める事が出来るだろう? 家が近くなった頃、指導者さんの視線が私の腕に向く。 指導者さんの顔色が変わったのが判った。 「どうしたの?」 車を道端にとめ、私の腕をまく...
文字数:約1093文字 【 涙雨2 】 何が出来たと言うのだろう。 何が出来ると言うのだろう。 どうして、こうしなければならないの? 会社に着いた時には、またびしょ濡れだった。 このまま中に入るのはさすがに、気が引けた。 とりあえず、雨の当らない所でうず...
文字数:約1127文字 【 涙雨1 】 何をしたいのだろう。 何をしているんだろう。 どうして、こうしてるの? 毎日続く雨の日。 指導者さんは従姉妹の指導者さんとして忙しく、私はいつもの通り、指示されないまま動く。 適当に書類を作って、時間を見て会社を出る。...
文字数:約1293文字 【 涙声 】 伝えたい言葉は不正確。 言葉は何も伝えない。 無意味な音が響くだけ。 雨が降っていた。 梅雨に入りかけた空はいつも曇っていた。 指導者さんと一緒に車でお客さんの家などを回っていた。 指導者さんの言葉の端々に刺があったよう...
文字数:約677文字 【 小言 】 愚かで我侭な行為。 自分勝手で幼稚な行動。 それが、他人の目。 週が開けた日。 何事もなかった様に……とは、いかなかった。 会社に行くと、無断欠勤の話。 「ずっと駅に居たの? 今度から電車に間に合わなかったら、誰か迎え...
文字数:約653文字 【 欠勤2 】 何もないよ。 何も無かった事にするの。 誰も何も知らなければ良いの。 電車に乗る気もない。 連絡する気もない。 『あー、やばい。無断欠勤しちゃった。』 淡々とそんな事を思った。 携帯の電源はとっくにOFFにしてあ...
文字数:約723文字 【 欠勤1 】 朝が来なければ良いと思った。 眠らなければ、朝が来ない気がして夜更かしした。 布団の中は悪夢でいっぱい。 寝坊した。 慌てる事もなくそう思った。 いつも、ギリギリに起きていた。 それが、寝坊した。 間に合わないと諦め...
文字数:約600文字 【 仕事 】 人を使う。 人に使われる。 別に私はどうでも良かった。 「これ、やっておいて」 ボーっとしていた私に、指導者さんはチラシを渡す。 私はそれを折る。 自分の仕事は一通り終わらせて暇だった。 それを見ていた先輩が同じ様にチ...
文字数:約573文字 【 歌声 】 息苦しい。 歌う事なんて出来ないよ。 声を出して伝わったものなんて無かった。 その日はミーティングでカラオケにいった。 誰がどの曜日にどこの企業へ行くかとか、 これだけの目標があるとかの話が進む。 私はぼんやりとそれを聞...
文字数:約648文字 【 化粧 】 嫌いなの。 短いスカートも化粧も、嫌い。 大人になりたかったわけじゃない。 その日は暑くて、スカートをはいて行った。 「スカートはいてくるの、初めてだね」 先輩が私のスカートに気がついて言う。 それに続いて、指導者さ...
文字数:約852文字 【 守護 】 狂いだす。壊れかける。 叫びにならない叫び声。 何を望んだのかさえ、忘れ果てる。 従姉妹ちゃんが同じ会社に入ってきた。 私と同期で入った人は契約をたくさん取って来る。 置いていかれる気がした。 違う、置いていかれた...
文字数:約875文字 【 自傷 】 痛みを感じなくなるほど、心が麻痺する。 何もいらない。何も欲しくない。 ただ、何もかも忘れたいだけ。 夜、どうしようもなくなって、遠くにいる友達に携帯メールした。 『辞めたい。辞められない。無断欠勤でもしようかな』そんな...
文字数:約817文字 【 抑制 】 制御しきれないほどの、感情。 押し留めて、押し殺して。 幾重にもかける、抑制。 インターネットが繋がらなくなった。 その場所は私にとって唯一の外だった。 息抜きの出来る場所だった。 ゴールデンウィーク中も、ネットには...
文字数:約1055文字 【 猫傷 】 苛立ちがネコに伝わったのか。 ただの偶然なのか。 ネコが止めたような気がした。 ネコの恋の季節だった。 その日、いつもなら仕事でしないネコの散歩をした。 私は猫の動かない様子に、苛立って紐を引っ張る。 猫は車庫に居た...
文字数:約658文字 【 折紙 】 紙飛行機が部屋を埋め尽くす。 それに乗って、どこかへ行ってしまいたかった。 ここから逃げ出したかった。 電車が通り過ぎる音が聞こえた。 連休前……私は会社に行く気が無かった。 辞めてしまいたかった。 自分の保険の成績...
文字数:約572文字 【 物欲 】 モノで心が満たされるなら、とても楽でしょう。 そう出来るなら、そうしたでしょう。 だけど、それでは満たされないのです。 その日、帰りに時間がなければ私はそんな事しなかった。 1時間1本の田舎で乗り過ごせば、待ち時間は有り...
文字数・約872文字 【 花見 】 花が無くても花見は出来る。 名目だけあればいい。 目的は別だから。 会社の花見があった。 指導者さんが幹事役で色々と動き回っていた。 私のことなど、考えていられないくらい。 「ねぇ。カイヌシちゃんはどうするの?」 ...
文字数:約1468文字 【 変化 】 変わらない事に苛立った。 変わってしまう事が怖かった。 変化は私の目に見えていなかった。 桜の咲く頃。 それなりに仕事が楽しいようにも思えていた。 だけど、それは日々が淡々と過ぎる事に慣れただけ。 朝起きて、職場に...
文字数:約584文字 【 旅人 】 些細な事が許せなかった。 嬉しいハズの言葉に虚しさを覚えた。 いつから、こんなに余裕がなくなったのだろう。 桜の蕾が膨らむ頃。 旅人さんに会った。 「すみません」 研修の帰りに声を掛けられた。 「駅はどこですか...
文字数:約1110文字 【 吹雪 】 冷たさも寒さも感じなかった。 自分が歩いている場所さえ、知らなかった。 行き場所を決める事が出来ないまま歩いていた。 雪の季節が終る頃。 研修で一日の報告をした後、課長さんに叱られた。 悪いのは私だと思う。 やる気...
文字数:約1957文字 【 入口 】 始まってしまえば、走り出せるような気がした。 立ち止まる事さえしなければ、振り返る事さえしなければ、どこまでも行ける気がした。 例えそれが、無謀でも。例えそれが、暴走だろうとも。 とりあえず、職の不安は消えた。 ただ家...
文字数:約1149文字 【 研修 】 動き始めたものは何だったのか。 私は未だ、気が付かずにいた。 続く日々に刻まれた波紋はゆっくりと広がる。 入社の後は研修があるという。研修後の試験に受かれば、仕事が出来るのらしい。 研修期間は2週間程度。駅前の支社での...
文字数:約924文字 【 入社 】 意味も分からず、流されるまま。 行き着く場所はどこでしょう。流れ着く場所も知らないまま。 狂い始めたのはどの場所からだったのだろう。 家に帰った私に母は冷ややかだった。 「どうだった?」 「交通費、貰った~」 私はい...
文字数:約1466文字 【 新年 】 何処までも続く日が当たり前だと疑わなかった。 幸せを感じる事も不幸せを感じた事もない。 続く日々は平穏無事で、何事もなく過ぎ去ると思っていた。 年が明けても、何も変わらない気がしていた。 職を探してしっかりしなきゃと焦...
【 ××× 】 判ってる。 これが異常だって。 それでも、止められない。 止めない。 そうしなければ、生きられないから。 そうする事を知ってしまったから。 これはいたみ。見えない『いたみ』 これは叫び声。声にならなかった『叫び声』 これは涙の痕...
閲覧注意の物語です。 ー これは壊れた物語 ― 保険営業の仕事を私に紹介した父。 それに反対した母。 保険営業の仕事を始めた私は、変わっていった。 ※自傷行為の表現があります※ 自傷行為の推奨はしていません。 :: ×バツ× :: 200...